PAL067便
どうやら機長は
ゴリラを救ってしまったらしい?!
その2






前回からの続き



この新聞コピーの概要


ジョージア州モーガントン(AP通信)

StuartとJaneのDewar夫妻は
去年(97年)、評価総額数百万ドルにおよぶ
彼らのコンピュータソフト会社を売却して
シカゴを離れ、モーガントンの田舎町にやってきた。

それは、彼らの長年の夢だった
「Gorilla Haven」を作るためだ。

この「Gorilla Haven」とは
高齢や近親繁殖のために
動物園で公開が出来なくなったゴリラ達を
保護するための施設だ。

絶滅の危機に瀕した種族である彼らを
合衆国の法律では殺すことも輸出することも出来ない。
そのため彼らは動物園の中の窮屈な囲いの中に
閉じ込められている。

そんな霊長類を救うためにDewars夫妻は立ち上がった。

だが、モーガントンの地元では
ゴリラが病気を広めるのでは?とか
川を汚染して土地の資産価値を落とすに違いないと
反対運動が起きている。

中には家を焼くぞとかゴリラを盗むぞ、
などと脅迫電話をかけてくる人間もいる。
反対署名を集めたり、エボラ出血熱の小説のコピーを
配ったりもしている。

そんな中、Dewar夫妻は
ゴリラ達のために最高の環境を提供し続けている。
24時間の監視体制と電子的な防御壁などを作って
ゴリラ達が数ヘクタールの土地で
自由に動き回れるようにしている。

「完全な安全は保てています。
誰が忍びこもうとしない限り、
誰も彼らを傷つけることは出来ないでしょう」
とDewarさんの言葉で記事は終わっている。



そして、記事の左下には
Dewar夫妻の写真が出ている。
ゴリラに関するコレクションで溢れた
ログキャビンの中で微笑むDewarさんと奥さんのJaneさん。

この写真の下にはDewarさん自身と思われる
落書きで「↑」印と「笑顔マーク」が書いてある。

ここまで読んで、機長は感動してしまった。

あのDatebk3に
こんなバックストーリーが隠されていたなんて!

実は機長もPimlico社HPのサーバ名が
「gorilla-haven」となっているのは気になっていた。
が、そこにこんな意味があるなんて!

さっそく機長は、
「gorilla-haven」サーバのトップページを開いてみた。
そこには可愛いゴリラちゃんの写真が出てる。

そして、「Gorilla Haven」とは何か?
・・・についてが詳しく書かれていた。
Pimlico社のサイト内にある
Steurtさんの略歴(CESD--Who is he...What is he?????)も
参考にしながら、
DewarさんとGorilla Havenについて
もうちょっと詳しく紹介しよう。

C. E. Steuart Dewarさん


CESDことC. E. Steuart Dewarさんは、
実は、ある種の電子出版システム
(multi-terminal publishing systems???)
創始者の一人だったらしい。

そして1975年に社長として
Dewar Information Systems社を創設して、
新聞社の編集関連のシステムを手がけたらしい。

1988年には同社は
「アメリカ国内で急成長中の会社500社!」の
リストの中で115位にランクされたらしい。
凄いな、これは。
他にも80年代に数々の業界賞を受賞し、
事業家の殿堂みたいなのにも入っちゃってるらしい。

1990年代に入ると、
DewarViewという自分の名前を
冠した製品を発表して
これは世界中の新聞社で採用されたらしい。
こうした実績が評価されて
1994年Seybold Award for Excellence賞を受賞!
なんか、早くも電子出版業界で
立志伝中の人物になってしまった。

そんなDewarさんが
これまでの人生とは180度違った人生を歩み始めたのは
1995年のことだった。

すでに電子出版業界の
リーダーシップ企業となっていた
Dewar Information Systems社を
ノルウェーのソフトウェア会社である
Sysdeo社に売却してしまった。

そして彼は、
これまでビジネスの拠点としていた大都会シカゴを離れ、
ジョージア州はBlue Ridgeにほど近い
North Georgia山脈の275エーカーの土地を購入し、
奥さんのJaneさんとともにそこに移った。
ここで、The Dewar Wildlife Trustという
野生動物のための財団を創設し、
ウエスタンローランド種のゴリラのために作られた
保護地区であるGorilla Havenを起こした。

同時に、Pimlico社というブランドで
シェアウェアソフトを書いている。
     



というのが、Dewarさんのこれまでの半生の概要だ。

ところでなぜ彼は
前半生の電子出版業界における
輝かしい地位をすべて投げ捨ててまで
ウエスタンローランド種のゴリラのための
新しい人生を選択したのか?

たとえば彼のシカゴ大学時代の専攻科目が
「動物行動学」と「生化学」、「音楽」だったというのも
確かに気になるところだが、
それだけで説明することは出来ない。

でも、機長は彼の大学時代の
専攻分野を聞いてニヤリとしてしまった。
実は機長はDewarさんのソフト
「Datebk3」の微に入り細に入った
ユーザインターフェースがずっと不思議でならなかった。
普通のソフトウェア作家では思いつかないような
超高級ホテルのベテランホテルマンのようなアイデアが
そこには溢れている。
どうして?と思ってきた謎も、
彼が「動物行動学」を学んでいた、と思うと
ちょっと解けたような気がする。
動物たちの行動を解析するように
彼は我々ユーザの行動を解析して、
ユーザーインターフェースを練り上げていった。
そんな気がしてきた。

さて、話が少し横道に逸れてしまった。

電子出版分野で大成功を収めていたDewarさんが
なぜゴリラのための
もうひとつの新しい人生を選択したのか?

その最大の背景として
Dewarさんの妻Janeさんの存在を
無視することは出来ない。

Jane T. R. Dewarさん


機長が貰った初めてのメールの中で


「While Steuart is the genius of computers,
I am a gorilla wizard! 」

(主人はコンピュータの天才だけど、
私はゴリラの天才よ)



と、自己紹介してくれたDewarさんの妻
Janeさんは、
Lawrence大学時代に言語学を専攻。

そして、言語学を勉強するうちに、
Kokoという名前のゴリラの存在を知った。
Kokoには人間とコミュニケーションをとる才能があり、
Janeさんはその才能に興味を持った。

以降、1980年代の中頃から
世界中の動物園を回って
1995年までには欧米の400の動物園にいる
ゴリラ達と出会った。

気がついたら彼女は言語の、
というよりゴリラの専門家になっていた。
そんな彼女のゴリラに対する情熱が報われた、
こんな出来事もあったという。

それは1989年のこと。
会話能力を持つゴリラのKokoに向かって
Janeさんはこう伝えた。

「I love gorillas」
(私はゴリラが大好き。)

するとKokoはJaneさんに向かって
こう答えたという。

「Love gorillas YOU」
(私たちも、あなた、好き。)

いい話だ。



電子出版業界の天才プログラマーも、
こんな素敵な奥さんをもって、
ゴリラのことを考えずにプログラムを書き続けることは
出来なかったようだ。

奥さんとともにDewaraさんも世界中の動物園を回るようになり、
そこでゴリラとともに、その飼育係たちと友人になっていくうちに
あるひとつの現実に気づいていった。

動物園で幸せな生活を送っているゴリラもいるが、
そうではないゴリラもいる。

そんなゴリラの存在を知ってDewar夫妻は
彼らを何とか救ってあげられないだろうか?と考えた。
それほどに二人はゴリラを愛していた。

彼らが救ってあげるべきだ、と考えたゴリラについての記述は
Gorilla Havenサイト内の「What is Gorilla Haven?」
かなり詳しく説明されている。

かなり専門的な用語(しかも英語!)もあって
機長はそのすべてを理解できた訳ではないが、
だいたいこんなゴリラさん達のことらしい。

■余分なオスゴリラ
(動物園内のゴリラ社会で余ってしまったオス)

■遺伝子的な余剰ゴリラ
(単純に生まれすぎてしまったゴリラ、など)

■ゴリラ自身の事情
(個別の性格や歴史によって集団に適合できないゴリラ)

■高齢や健康問題のあるゴリラ
(年齢や健康上の理由で集団に適合できないゴリラ)

■施設の長期改修などによる事情
(動物園が長期の改修工事をするために行き場がなくなったゴリラ)

※これらのゴリラ事情に
前述のAP通信記事でも触れられている
保護動物の輸出等を規制した合衆国法の問題が絡んで、
行き場のない動物園のゴリラ達が(とくにアメリカには)
厳然として存在する。


こうしたゴリラを救うために
Dewar夫妻は立ち上がった。

彼らはこう宣言している。


If only one gorilla is helped,
Gorilla Haven will have served its purpose.
If no gorillas are ever housed at Gorilla Haven
because all gorillas are housed appropriately
and in the best way possible,
an important goal of Gorilla Haven will also
have been reached.

もしもゴリラが一匹でも助かれば
Gorilla Havenは
その使命を全うしたことになります。
もしもすべてのゴリラ達が
適切で最良の施設に引き取られて
Gorilla Havenからゴリラが
一匹もいなくなったとしたら、
これはGorilla Havenが目指す
最高のゴールにたどり着いたと言えます。

こうして夫妻は
動物園のように「公開」を目的としない
純粋にゴリラのための保護施設
「Gorilla Haven」を作った。

いろんな軋轢もあるようだが、
彼らはゴリラのために今も頑張っている。

・・・と、
機長はここまでGorilla Havenのことを長々と書いているが、
これは誰かに頼まれたから書いている訳ではない。

また、日頃から機長が自然のことや
野生動物のことを心配しているから
書いているのではない。
機長はそれほど素敵な人物じゃない。
これまでの人生で、
野生動物のこと、とくにゴリラのことなんか
これっぽっちも考えたこともなかった。

でも、たまたま自分が大好きなソフト(Datebk3)の作者の
バックグラウンドを知り、
なんだか嬉しくなってしまったので、
こうして書いている。

ただそれだけだ。

だって嬉しいじゃない?

PDAマシンのPIMソフトを
登録するたびに、
居場所のなくなったゴリラが救われる、なんて!

デジタルがいきなりアナログになる快感!
Dewarさんの生き様に機長はそんな
なんだかよくわからないが、
21世紀にも残って欲しい、そんな快感を感じた。
だから嬉しい。

・・・なんて思ってしまう機長は古いタイプの人間だろうか?
それとも単なるお人よし?

どっちにしても機長は、
これからもDewar夫妻とDatebk3とPimlico社と、
ついでにGorilla Havenを応援していきたいと思う。

どうやって?

う〜ん。



なお、Pimlico社のサイトのURLである
<http://www.gorilla-haven.org/pimlico>から
最後の「/pimlico」をとって
<http://www.gorilla-haven.org>のURLを開くと
「Gorilla Haven」のサイトに行くことが出来る。
興味のある方は是非このサイトを訪ねて欲しい!
可愛いゴリラさん達が
Dewar夫妻とともに待っている。




※【追伸その1】


ところで、機長はDewarさん宛のメールで
恐れ多くもこんなことを書いてしまった。


They are pretty and look like you(...sorry)!

(Gorilla Havenのサイトに出ている
ゴリラさんたちの写真を見たら)
彼らはとっても可愛くて、
おまけにDewarさんに似てました。
(ごめんなさい!)


そしたらその返事には、こうあった。


Ahh for a gorilla-lover,
that is a true compliment.

ゴリラ愛好家にとってそれは、
たまらない!最高のお世辞だ!


Dewarさんのことが
ますます好きになってしまった!!


※【追伸その2】


今回は、Dewarさんと夫妻の夢である
Gorilla Havenについて書いたが、
実はPimlico社やDatebk3についても、
今回Dewarさんに質問することが出来た。
そのお話はまた今度!






おまけ





サッカー機長014




う〜ん。

最近、急に仕事が忙しくてなって
ワールドカップ観戦もままならない状況だ。
でも、しっかり録画して
楽しみにしている。

機長の応援しているチームの中では、
オランダが・・・がんばれ、今夜!

by
サッカー機長2号



じゃ。







1998年7月4日





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